概要と最新の研究課題
畜産業及び食品産業の振興と国民食生活の安定に寄与することを目的とし、食肉の生産、処理、加工等に関して専門委員会の審議を経て、理事会において、課題、研究者、事業費等を決定し、研究調査を実施します。
令和4年度研究課題
研究課題 | プロジェクト研究メンバー |
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①と畜・解体処理(特に牛の背割り)の自動化・効率化に関する研究開発 | (1)新潟食料農業大学 (2)鹿児島工業高等専門学校 (3)食肉生産技術研究組合 (4)マトヤ技研工業株式会社 (5)公益財団法人伊藤記念財団 |
②食肉生産における温室効果ガス排出抑制技術の開発と検証 | (1)農研機構畜産研究部門 (2)栃木県畜産酪農研究センター (3)前田牧場株式会社 (4)公益財団法人伊藤記念財団 |
③牛伝染性リンパ腫の発症早期診断法の開発とその実践 | (1)国立大学法人北海道大学大学院 (2)国立感染症研究所 (3)株式会社ファスマック (4)公益財団法人伊藤記念財団 |
④牛伝染性リンパ腫の清浄化に向けた研究開発」ーワクチン開発に必要な知見の集積ー | (1)国立大学法人東京大学大学院 (2)農研機構動物衛生研究部門 (3)公益財団法人伊藤記念財団 |
令和4年度研究課題 概要
①と畜・解体処理(特に牛の背割り)の自動化・効率化に関する研究開発
1 研究背景
食肉処理施設におけると畜・解体処理については、従業員の高齢化に加え、刃物使用による危険な作業であるうえに、騒音等の厳しい労働環境等により、従業員の確保が次第に困難となっている。
特に、牛の背割りについては、ロースやヒレに傷をつけずに正確に背割りする技術が求められるが、近年、熟練作業員の確保が困難となってきており、背割り作業の自動化・半自動化、効率化の技術の開発が求められている。
2 研究目的
大学、研究機関、機械メーカー等の専門家を集め、熟練作業員の背割作業動作を調査し、センシング技術や画像解析技術、ロボット技術などを応用し、牛背割り自動化装置を開発する。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)新潟食料農業大学
(2)鹿児島工業高等専門学校
(3)食肉生産技術研究組合
(4)マトヤ技研工業株式会社
(5)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2018年度(平成30年度)~
②食肉生産における温室効果ガス排出抑制技術の開発と検証
1 研究背景
温暖化による地球規模の環境の変化は、気象災害の増加・激化等により人々の生活に被害を与えるとともに、生態系に深刻な影響を及ぼしている。特に自然環境との関わりが深い農林水産省にとっては、温暖化は極めて重大な影響をもたらす要因となる。2020年10月には、当時の総理大臣が2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロとする目標を明言し、2030年度中間目標として2013年度比46%削減の達成に向けて取り組みが指示されたところである。
2 研究目的
排せつ物に起因するGHG、主として一酸化窒素(N₂O)は、排せつ物処理化過程で発生する。飼料中のタンパク質、特にアミノ酸組成を整えることで排せつ物中の窒素量が低減するため、N₂Oの発生抑制が可能である。したがって、消化管メタン抑制に比較して取り組みやすく、N₂Oの温暖化係数が298であることを考えると効果も大きい。
以上のことから、本プロジェクトでは食肉用家畜からの排せつ物処理過程で発生するN₂Oの削減に焦点をあてた研究課題を実施する。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)農研機構畜産研究部門
(2)栃木県畜産酪農研究センター
(3)前田牧場株式会社
(4)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2022年度(令和4年度)~
③牛伝染性リンパ腫の発症早期診断法の開発とその実践
1 研究背景
牛伝染性リンパ腫は、全国的に増加が続き、発生届出数は令和2年に4,197頭で牛の監視伝染病中最多となっている。発症率は低いが発症すると飼養農家の経営に大きな影響を及ぼすため、「日常の管理による感染拡大防止と感染牛の計画的な更新により清浄化をめざす」とされており、発症リスクを把握して行う早期摘発淘汰は重要である。しかし、本病の発症機序は解明されておらず発症を予測できる診断法は存在しない。
2 研究目的
牛伝染性リンパ腫の主な原因は、レトロウイルス科に属する牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)である。本病の発症機序としてBLVによる宿主遺伝子の挿入部位が予後を規定している可能性があることから、この発症機序を検証することにより早期診断法の実現をめざす。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)国立大学法人北海道大学大学院
(2)国立感染症研究所
(3)株式会社ファスマック
(4)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2022年度(令和4年度)~
本プロジェクトから牛のリンパ腫発症を予測するがん検診技術を開発しました。詳しくはこちら。
④牛伝染性リンパ腫の清浄化に向けた研究開発 ーワクチン開発に必要な知見の集積ー
1 研究背景
牛伝染性リンパ腫は、全国的に増加が続き、発生届出数は令和2年に4,197頭で牛の監視伝染病中最多となっている。発症率は低いが発症すると飼養農家の経営に大きな影響を及ぼすため、「日常の管理による感染拡大防止と感染牛の計画的な更新により清浄化をめざす」とされており、発症リスクを把握して行う早期摘発淘汰は重要である。しかし、本病の発症機序は解明されておらず、ワクチンも発症を予測できる診断法も存在しない。
2 研究目的
牛伝染性リンパ腫の主な原因は、レトロウイルス科に属する牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)であり、ワクチン開発のための多くの研究が行われてきたが、有効性の評価が極めて難しいこと等から未だ実用化には至っていない。治療法がなくワクチンを望む飼養農家の声が根強いため、新たな可能性のあるワクチン株を中心としたワクチン開発に必要な知見の集積を行う。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)国立大学法人東京大学大学院
(2)農研機構動物衛生研究部門
(3)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2022年度(令和4年度)~
※研究課題「食肉の健康寿命及びその関連要因に与える影響」については令和2年度で終了いたしました。